SHRIMP ENCYCLOPEDIA / HISTORY
シャドーシュリンプとは何か?
SHADOW SHRIMP HISTORY — INTRODUCTION
シャドーシュリンプとは何か? その起源と名称の歴史をたどる
シャドーシュリンプの品種解説記事を書いているうちに、私自身が持っていたシャドー系の知識に、思っていた以上の偏りや欠落があることに気づかされました。
これまで何の疑いもなく「シャドー系というのは……」と説明していた内容にも、改めて調べてみると相互に矛盾する部分があり、いつの間にか定説だと思い込んでいたこともあります。
現在の日本では、ブラックシャドーやレッドシャドー、ターコイズシャドーなどの一群を「シャドーシュリンプ」「シャドー系」と呼ぶのが一般的です。
当店では、シャドー系発祥の地とされる台湾からこれらのシュリンプを輸入していますが、台湾では「金剛蝦(ジンガンシャ)」あるいは「金剛系」と呼ばれています。
それが欧米では「Taiwan Bee」と呼ばれ、日本では「シャドーシュリンプ」「シャドー系」という名称が広く定着しています。
さらに、この品種群の成立についても、水晶蝦(クリスタルシュリンプ)から生じた突然変異を起源とする記録がある一方で、Tiger系との交雑によって生まれたという説も古くから語られてきました。
「起源」と「名称」を分けて考える
今回、改めて知識を整理するために資料を調べていくと、「このシュリンプ群がどのように誕生したのか」という品種群の起源と、「なぜShadowと呼ばれるようになったのか」という名称の由来と変遷は、ひとつの話として扱うべきではないことが分かってきました。
そこでまず、台湾で金蝦や水晶蝦から金剛系が成立していった記録をたどり、突然変異説やハイブリッド説がなぜ生まれたのかを検討します。
そのうえで、台湾の「金剛蝦」、欧米の「Taiwan Bee」、そして日本の「シャドーシュリンプ」という異なる呼称を追い、「Shadow」という言葉がもともと何を指し、なぜ日本では品種群全体を表す名称として定着したのかを考えていきます。
地域によって異なるシャドー系の呼び方
| 地域 | 主な呼称 | 意味・傾向 |
|---|---|---|
| 台湾 | 金剛蝦/金剛系 | 台湾で成立した育種群として使われてきた呼称 |
| 欧米 | Taiwan Bee | King Kong、Panda、Wine Red、Blue Boltなどを含む系統群を指す呼称 |
| 欧米の一部 | Shadow Bee | Taiwan Beeの別称として使われる一方、初期には特定の色彩表現を指していた可能性がある |
| 日本 | シャドーシュリンプ/シャドー系 | Taiwan Bee/金剛系に相当する系統群全体を指す名称として広く定着 |
このように、現在ほぼ同じ品種群を指していても、地域によって使われてきた名称は異なります。
しかも調べていくと、「金剛蝦」「Taiwan Bee」「Shadow Bee」という言葉が、最初からすべて同じ意味で使われていたとは限らないことも見えてきました。
「どのように生まれたのか」と「なぜShadowと呼ばれるのか」は、別々に追う必要があります。
起源について、ひとつの答えは出せるのか
結論から申し上げると、現存する資料だけから、シャドーシュリンプの起源をひとつの説に断定することはできませんでした。
台湾には、2000年代半ばに現れた「金蝦」と呼ばれる個体を水晶蝦の育種に利用し、その後、黒金剛をはじめとする金剛系が成立していったことを示す記録が残されています。
一方、日本や欧米ではWhite BeeやGold Beeの由来をめぐる議論があり、さらにTiger系とBee系を実際に交配すると、後の世代からシャドーシュリンプによく似た表現が現れることも、ブリーダーレベルで確認されてきました。
つまり「突然変異説」と「ハイブリッド説」を単純に二者択一として扱うだけでは、説明できない部分があります。
当時の記録、ブリーダーによる交配実験、後年の研究や公的資料を時系列に並べてみると、どこまでが確認できる事実で、どこからが仮説なのか。そして、なぜそれぞれの説が生まれたのかは、かなり見えてきます。
二つの方向からシャドーシュリンプを探る
そこで今回は、「起源」と「名称」を二つの記事に分け、シャドーシュリンプをめぐる歴史を追っていきます。
「シャドーシュリンプとは何か?」という単純に見える問いから始めて、その品種群が生まれた過程と、世界各地で異なる名称が使われるようになった経緯を、それぞれの資料から探っていきます。