Red Bee Shrimp

レッドビーシュリンプ

レッドビーシュリンプ

基本情報

属
Caridina属
学名
Caridina logemanni
系統
ビーシュリンプ系
体長
成体で約2〜3cm

特徴

レッドビーシュリンプは、赤と白の鮮やかな模様を持つCaridina属の観賞用淡水シュリンプです。1990年代に日本の鈴木久康氏によって作出され、現在では世界各地に多くの愛好家を持ち、世界で最も愛されている淡水シュリンプのひとつと言っても過言ではありません。

日本では一般に「ビーシュリンプ」「レッドビーシュリンプ」と呼ばれますが、海外の観賞シュリンプの世界では、レッドビーやブラックビー、そこから発展したさまざまな改良系統を含めて、「Caridina」という言葉がひとつの大きなカテゴリーのように使われています。

レッドビーシュリンプ最大の特徴は、体に赤と白の模様が入る鮮やかな体色です。

作出初期の個体と比べ、長年の選別によって白色部分の発色や不透明感が大きく向上し、現在ではいわゆる「殻厚」と呼ばれる、色の密度が高く透けの少ない個体が高く評価される傾向があります。

模様にはさまざまなタイプがあり、赤と白が帯状に入る「バンド」を基本に、背中側から見たときに赤い部分が丸く残る「日の丸」、その赤い部分に白いラインが入る「進入禁止」、頭部を中心に赤色を残して胴体の白色部分が大きく広がる「モスラ」など、多くの表現が生まれました。

かつては模様によってA・S・SS・SSSなどに分ける国際的なGrade分類や、ドイツで考案されたK0~K14の分類も広く使われましたが、現在では模様によるグレード分類はあまり重要視されておらず、むしろ色の密度が高く、赤と白の境界が明瞭な個体が高い評価を得ています。

系統・歴史

レッドビーシュリンプの歴史は、香港などから日本へ輸入され、コケ取り用などとして流通していた黒と白のビーシュリンプから始まります。

1990年代、愛知県の鈴木久康氏は、飼育していた黒と白のビーシュリンプの中から、黒色部分が赤く変化した突然変異個体を発見しました。その後、この赤色変異を繁殖・選別し、赤と白の体色を安定して受け継ぐ系統へと固定していきます。

鈴木氏自身が1998年に発表した資料では、このエビを「Crystal Red Bee Shrimp」と呼び、元のBee Shrimpが黒と白であるのに対して、突然変異個体ではその黒い部分が赤くなったことを説明しています。

そしてレッドビーシュリンプの重要性は、その美しさだけではありません。それまで水槽のコケ取りや掃除役として飼育されることの多かった淡水シュリンプが、エビそのものの色や模様を楽しみ、繁殖し、より美しい個体を選別していく「観賞の主役」へと変わっていく、大きなきっかけとなりました。

レッドビーシュリンプは、世界中で愛される観賞用淡水シュリンプ文化の出発点となった品種です。

クリスタルレッドからレッドビーへ

作出初期には、鈴木久康氏自身が「Crystal Red Bee Shrimp(クリスタルレッドビーシュリンプ)」という名称を使用していました。その後、日本では「レッドビーシュリンプ」という名称が広く使われるようになり、現在ではこちらが一般的な呼び名として定着しています。

一方で、「クリスタルレッドシュリンプ」と「レッドビーシュリンプ」を異なる系統や品種として区別する見方もあります。しかし、その区別がどの時点で、どのような系統的根拠に基づいて成立したのかを示す明確な資料は確認できません。

また、「クリスタルレッド」の名称が特許や商標によって使用できなくなったため、「レッドビーシュリンプ」という名称が広まったとする説もあります。ただし、現在確認できる範囲では、「クリスタルレッドシュリンプ」の商標登録や、それに関係する特許等は確認できず、この説を裏付ける一次資料も確認されていません。

AtWellではこうした経緯を踏まえ、現在広く定着している「レッドビーシュリンプ」を品種名として使用しています。

学名は Caridina logemanni

レッドビーシュリンプの学名は、現在では一般に Caridina logemanni とされています。

古い書籍やウェブサイトでは Caridina cantonensis、あるいは Caridina cf. cantonensis と記載されていることがあります。しかし、これは単純に学名が変更されたというわけではありません。

2014年、Werner KlotzとThomas von Rintelenは、中国南部および香港のCaridinaを調査し、香港の限られた地域に生息するビーシュリンプを新種 Caridina logemanni として記載しました。研究では形態的特徴だけでなくmtDNAも調べられ、C. cantonensis とは別種として整理されています。

さらにこの研究では、野生個体だけでなく、アクアリウムで流通していた「bee shrimp」も C. logemanni の標本として遺伝解析に使用されています。つまり、野生の C. logemanni と観賞用として流通していたBee Shrimpの双方を比較したうえで、分類学的な整理が行われています。

このため現在では、レッドビーシュリンプは一般に Caridina logemanni の改良品種として扱われています。

野生の Caridina logemanni

野生の Caridina logemanni は、香港・新界(New Territories)北東部の非常に限られた地域から知られています。

2014年の原記載では、わずか3つの小規模な山地渓流から確認されており、浅い水中に堆積した落葉の中や、岩の間などで生活しています。

生息地で記録された水質の一例では、水温19.8℃、pH6.0、導電率33µS/cm、溶存酸素8.1mg/Lという値が報告されています。非常に導電率が低く、酸素に富んだ山地の渓流環境であることが分かります。

ただし、これは野生生息地で記録された一例であり、この数値をそのままレッドビーシュリンプの適正飼育水質と考えることはできません。

「コケ取り」から「観賞の主役」へ

レッドビーシュリンプの登場が重要なのは、新しい色のエビが一品種誕生したということだけではありません。

それまで淡水シュリンプは、ヤマトヌマエビに代表されるように、水槽内のコケを食べる「掃除役」として利用されることが一般的でした。

しかし、赤と白の鮮やかな体色を持つレッドビーシュリンプの登場によって、シュリンプそのものの色や模様を観賞し、繁殖させ、より美しい個体を選別して楽しむという新しい飼育スタイルが広がっていきます。

やがてシュリンプを主役とした水槽が作られ、繁殖や選別そのものが趣味となり、日本から台湾、ヨーロッパをはじめとする世界各地へとその文化が広がっていきました。

レッドビーシュリンプは、それまでのヤマトヌマエビのようなコケ取りとしての利用とは異なり、淡水シュリンプを主役として水槽を作り、その美しさや繁殖・選別そのものを楽しむ「観賞用淡水シュリンプ文化」の出発点となった品種です。

さらに広がったCaridinaの品種改良

レッドビーシュリンプの登場後、その品種改良はさらに進んでいきました。

発色や模様をより美しくするための選別が繰り返され、それまでには見られなかったさまざまな表現が作り出されるようになります。台湾ではShadow(Taiwan Bee)と呼ばれる新しい表現も登場し、その後もPintoなど多様な系統へと品種改良の世界は広がっていきました。

さらに育種家たちは、同じ系統の中で選別を重ねるだけにとどまらず、レッドビー系の魅力をさらに高め、それまでにない色や模様を作り出すため、交雑可能な近縁種の特徴を取り入れるハイブリッド育種も行うようになります。

現在では、選別と交配を組み合わせながら非常に多様なCaridinaが作り出されており、その品種改良は今も世界各地で続いています。

今でも主役であり続けるレッドビー

多種多様な改良品種が登場した現在でも、レッドビーシュリンプがその役割を終えたわけではありません。

現在でもレッドビーシュリンプは観賞用Caridinaを代表する品種であり、その地位は揺らいでいません。 世界各地で開催されるシュリンプコンテストでもレッドビーは主要なカテゴリーのひとつとして扱われ、赤と白という基本的な体色の中で、発色の濃さや色の境界、体型など、より高い美しさと完成度が追求され続けています。

また、レッドビーシュリンプは観賞の対象としてだけでなく、現在のCaridinaの品種改良においても重要な役割を担っています。新しい系統を作出・改良する過程では、レッドビー系統との戻し交配(バッククロス)によって、発色や体型などの形質を補強したり、Bee Shrimpが持つ特徴を改めて取り入れたりする育種も行われています。

レッドビーシュリンプは、観賞用淡水シュリンプ文化の出発点となった歴史的な品種であると同時に、誕生から30年以上を経た現在も、観賞と品種改良の両面で主役であり続けています。